「仕事を辞めたい」と感じる瞬間は、誰にでも訪れるものです。その理由はさまざまですが、なかでも「給料が安い」という不満は、転職理由として特に多く挙げられるもののひとつです。
「給料が安いから辞める」という決断自体は、決しておかしなことではありません。しかし、その不満の中身を深く掘り下げないまま勢いで転職してしまうと、「転職したのに前より苦しくなった」という結果を招きかねません。
この記事では、「給料が安い」ことを理由に仕事を辞める前に押さえておきたい3つの確認ポイントを詳しく解説します。焦って結論を出す前に、一度立ち止まって自分の状況を整理してみましょう。
ポイント①:高い給料の裏にある理由を理解する

最初に確認したいのは、「仕事内容と給料の関係」を正しく理解することです。「具体的な不満はないけれど、とにかくたくさんお金がほしい」と漠然と考えている方は、とくに注意が必要です。
給料が高い仕事に共通する特徴
一般的に、給料が高い仕事には次のような特徴があることが多いです。
- 国内外への転勤が多く、定住が難しい
- 残業・休日出勤が常態化している激務
- 高度なスキル・資格・専門知識が必要
- 責任の重いポジションで、成果へのプレッシャーが大きい
- 危険を伴う業務・特殊な労働環境
高い給料をもらうためには、それ相応の負荷・専門性・責任が伴う場合がほとんどです。「お金さえもらえれば他のことはどうでもよい」と、本当に言い切れるでしょうか。
「お金さえもらえればいい」の危うさ
仕事を続けていけるかどうかは、職場の人間関係・仕事内容・プライベートの充実度など、給料だけでは判断できない要素が数多く関わっています。漠然とした理由で「とにかく給料の高い仕事」に飛びついてしまうと、入社後に「こんなに大変だとは思わなかった」「休みがなくてプライベートが崩壊した」という状況に陥り、後悔することになりかねません。
楽に多くのお金を稼げる仕事はそう多くありません。給料が高い求人に応募する際は、「なぜこの給料が支払われているのか」を求人票や面接でしっかり確認し、その働き方に自分が本当に耐えられるかを冷静に見極めることが重要です。
ポイント②:辞める前に在職中でできることを探す
2つ目は、「退職に踏み切る前に、今の会社にいながらできることがないか」を探すことです。給料が安いからといってすぐに退職してしまうと、給料アップを目指したはずが前より状況が悪くなってしまうということも十分に起こり得ます。まずは在職中にできる対策を検討してみましょう。
給料アップの交渉をしてみる
退職を決断する前に、「現職で給料アップの交渉ができないか」を考えてみましょう。社内で重要なポジションにいる、高度な専門知識を持っているなど、会社にとって「手放したくない人材」であれば、給料アップに応じて引き留めてもらえる可能性があります。
ただし、給料交渉には次のようなリスクも伴います。
- 一人だけを特別扱いすることが難しい会社も多い
- 交渉が失敗した場合、その後会社に居づらくなる可能性がある
- 場合によっては、かえって待遇が悪化するリスクもある
「自分の成果・実績を具体的な数字で示せるか」「会社にとって自分がどれほど不可欠な存在か」を客観的に評価したうえで、交渉するかどうかを慎重に判断しましょう。
資格取得・スキルアップで市場価値を高める
給料が安い仕事の多くは、「誰にでもできる仕事だから」という理由で低く設定されている傾向があります。替えがきく仕事内容であれば、転職しても給料アップは難しいかもしれません。在職中にできる有効な対策のひとつが、自らの努力によるスキルアップです。
- 業務に関連する資格を取得する
- 会社の資格手当・資格取得支援制度を活用する
- オンライン講座・通信教育で専門スキルを身につける
- 社内の別プロジェクトや別部署の業務に積極的に関わり、経験の幅を広げる
会社によっては、資格の保有や取得を目指していることを条件に資格手当を支給しているところもあります。自社の制度を見直し、興味のある資格があれば挑戦してみるのもよいでしょう。会社に留まるにしても転職するにしても、人材としての市場価値を高めておくことは、将来の選択肢を広げることにつながります。
待遇差に納得できる理由があるかを確認する
パートタイム・有期雇用労働者と正社員の間の不合理な待遇差を禁止する「同一労働同一賃金」のルールは、すでに全面施行されています。もし自分が非正規雇用(パート・契約社員など)で、正社員と同じような業務内容を担っているにもかかわらず給料に大きな差があると感じている場合、その待遇差が法律上「不合理」に該当する可能性があります。
会社には「待遇の内容とその理由について説明を求める」ことができ、会社側には説明義務があります。「待遇の差に納得がいく理由があるか」を確認したうえで、転職を検討するかどうかを判断するのも一つの方法です。
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ポイント③:本当に「給料が安い」ことが不満なのかを整理する
3つ目は、「会社への不満を丁寧に整理すること」です。「給料が安い」ことを理由とした転職は非常に多く、それ自体は決して不自然な理由ではありません。しかし、漠然と「給料が安いから」という理由だけで転職活動を始めてしまうと、転職先をうまく絞り込めなくなってしまうことがあります。同じ「給料が安い」という不満でも、その不満がどこに起因しているかによって、転職先選びの基準は大きく変わります。
成果が評価されないことへの不満
「やった分だけ評価されたい」というスタイルを好む方にとって、いくら頑張っても昇給しない、在籍年数などで機械的に昇給が決まる会社では、強いストレスを感じてしまうことがあります。「給料そのものが安い」というよりも、「自分の働きに対してこの給料は見合っていない」「こんなに頑張っているのに、あの人と同じ給料なのはおかしい」と感じている方が実は多いのではないでしょうか。
このように感じる場合は、給料の額そのものだけでなく、「昇給の条件」「評価制度」「手当の取得条件」をチェックするようにしましょう。「努力を正当に評価してもらえるなら、いくらでも頑張れる」というタイプであれば、個人の成績によって対価が得られる成果主義・実力主義の会社の方が合っている可能性があります。一方で、基本給が今より高くても昇給の仕組みや評価制度が今の会社と同じであれば、結局また同じ悩みを抱えることになりかねません。転職先の評価制度・昇給条件は、面接段階でしっかり確認することをおすすめします。
残業が多いのに給料に反映されないことへの不満
賃金の支払われない時間外労働、いわゆる「サービス残業」も、給料への不満の大きな要因のひとつです。
- そもそも残業代が設定されていない
- 一定時間までの「固定残業代」のみで、それ以上働いても追加の残業代が支払われない
- タイムカードとは別に実労働時間が管理されておらず、実態が正確に把握されていない
理由なく残業代を支払わないことは労働基準法に違反する行為ですが、実際にはこうした状態を放置している会社が少なくないのも事実です。まず転職活動を始める前に、「残業が多いこと」自体が不満なのか、「残業代が支払われないこと」が不満なのかを見極めておく必要があります。
「給料が高くなるなら、多少の残業があっても構わない」と考える方であれば、応募先企業の給与形態(固定残業代の有無・みなし労働時間制の適用範囲など)をよく確認しておくことが重要です。明らかな未払い残業代がある場合は、労働基準監督署・労働局への相談も選択肢のひとつです。まずは今の状況を正確に把握することから始めましょう。
本当の不満を見つけるための自己チェック
次の質問に答えることで、自分の不満の本質を見つけやすくなります。
- 給料が上がれば、今の仕事内容・人間関係・労働時間のままでも満足できるか
- 「給料が安い」と感じるのは、自分の頑張りが正当に評価されていないと感じるからか
- 「給料が安い」と感じるのは、残業をしても対価が得られないからか
- 同業他社・同年代と比べて、実際にどのくらいの差があるのか具体的に把握しているか
- 給料以外に、実は我慢していること・不満に思っていることはないか
これらの質問に丁寧に答えていくことで、「給料が安い」という言葉の裏に隠れている、より本質的な不満が見えてくることがあります。
給料を「軸」にした転職で失敗しないために
転職の際には、譲れない条件としての「軸」を設定することが大切です。「給料が安いから転職したい」という理由自体は、転職理由としておかしくありません。しかし、給料を理由に仕事を辞める前に、ここまで紹介した3つのポイントを改めて振り返ってみてください。
- 仕事内容と給料の関係を理解する
- 仕事を辞める前にできることを見つける
- 会社への不満を整理する
「給料が安い」という言葉の裏に、それよりも大きな不満やストレスの種が隠れていませんか。それを明確にしないまま「給料」だけを転職の軸にしてしまうと、今より給料が増えたとしても、転職先で同じような苦しさを味わうことになりかねません。仕事を辞めたい理由は、本当に「給料が安い」ことだけなのでしょうか。「自分にとっての軸」と「給料」のバランスを見極めることが、納得のいく転職につながります。
それでも転職を決断した場合に意識したいポイント
①給与の内訳を正確に確認する
求人票に記載された「給与」が、基本給のみなのか、固定残業代を含んでいるのか、各種手当を含んでいるのかを必ず確認しましょう。「見た目の年収」と「実際の手取り」に大きな差が出ることがあります。
②昇給・評価制度を確認する
入社時の給料だけでなく、その後どのように昇給していくのかという制度も確認することが重要です。年功序列型か成果主義型か、自分の働き方に合った仕組みかを見極めましょう。
③給料以外の条件も総合的に判断する
給料が高くても、労働時間・休日・人間関係・仕事内容に大きな不満があれば、結局長く続けられない可能性があります。「給料」を軸にしつつも、他の条件とのバランスを考えて判断することが、後悔しない転職につながります。
④面接で率直に確認する
給与・昇給制度・残業の実態について、面接で率直に質問することは決して失礼なことではありません。むしろ入社後のミスマッチを防ぐために必要な確認です。聞きにくいと感じる場合は、転職エージェントを通じて確認してもらう方法もあります。
よくある質問
Q. 給料アップの交渉をする際、どのように切り出せばいいですか?
A. 感情的に「給料を上げてほしい」と伝えるのではなく、これまでの具体的な実績・成果を数字で示しながら、「これだけの成果を上げてきたので、待遇について相談させていただきたい」という形で切り出すのが効果的です。あわせて、今後どのように貢献していきたいかという前向きな姿勢も伝えると、会社側も検討しやすくなります。
Q. サービス残業が横行している会社で、これは違法ですか?
A. 理由なく残業代を支払わないことは労働基準法違反です。ただし、固定残業代制度やみなし労働時間制など、正当な制度に基づいて運用されている場合は違法にならないケースもあります。自分の給与形態がどのような仕組みになっているか、雇用契約書や就業規則で確認しましょう。不明な点がある場合は労働基準監督署に相談することもできます。
Q. 給料以外に何を転職の軸にすればいいかわかりません。
A. 仕事内容ややりがい、働く時間・休日、人間関係・職場の雰囲気、将来のキャリアアップの可能性、通勤のしやすさなど、給料以外にもさまざまな軸があります。まずはこれまでの仕事で満足だったこと・不満だったことを書き出し、自分にとって何が一番重要かを整理してみることをおすすめします。
Q. 転職すれば必ず給料は上がりますか?
A. 必ずしも上がるとは限りません。未経験の職種・業種への転職の場合、一時的に給料が下がるケースも珍しくありません。「給料を上げたい」という目的であれば、自分のスキル・経験が正当に評価される業界・企業を選ぶことが重要です。転職エージェントに相談することで、自分の市場価値に見合った求人を紹介してもらえる可能性が高まります。
まとめ
- 「給料が安い」を理由に仕事を辞める前に確認すべき3つのポイントは、①仕事内容と給料の関係を理解する②辞める前にできることを見つける③会社への不満を整理する
- 給料が高い仕事には転勤・激務・高度なスキルの必要性など、それ相応の理由があることが多い
- 辞める前にできる対策として、給料アップの交渉や資格取得・スキルアップが有効な場合がある
- 同一労働同一賃金のルールにより、非正規雇用の場合は待遇差の説明を会社に求めることができる
- 「給料が安い」の裏には「成果が評価されない」「残業代が出ない」など、より本質的な不満が隠れていることが多い
- 本質的な不満を見極めずに給料だけを転職の軸にすると、転職先でも同じ苦しみを味わうリスクがある
- 転職を決断した場合は、給与の内訳・昇給制度・給料以外の条件も総合的に確認することが後悔しない転職につながる
- 「自分にとっての軸」と「給料」のバランスを見極めることが、納得のいく転職の鍵になる
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