有給休暇取得義務化スタート

有給休暇取得義務化とは?パートも対象?日数・条件・罰則・取れないときの対処法まで徹底解説

「有給休暇の義務化って聞いたことあるけど、パートの私にも関係あるの?」
「有給休暇を申請したら上司に嫌な顔をされた。これって違法?」
「週3日勤務のパートだけど、有給はどのくらいもらえるの?」

2019年4月から施行された「年5日の有給休暇取得義務化」は、すでに施行から6年以上が経過した2025年現在も、「正しく理解できていない」「実際に職場で機能していない」という声が多く聞かれます。

特にパートタイム・アルバイトとして働く方の中には、「有給休暇は正社員だけのもの」「パートには関係ない制度」と誤解している方も少なくありません。しかし、有給休暇はパートタイム・アルバイトにも付与される権利であり、義務化の対象にもなり得ます。

「有給を取りたいと言えない雰囲気」「申請したら嫌がらせを受けた」「有給があることを教えてもらえなかった」という状況は、法律に違反している可能性があります。

この記事では、有給休暇取得義務化の基本的な内容・パートへの適用・有給休暇の付与日数の計算方法・会社に取らせてもらえないときの対処法・2025年現在の最新動向まで、わかりやすく徹底解説します。

有給休暇取得義務化の基本【おさらい】

まず、有給休暇取得義務化の基本的な内容を整理しておきましょう。この制度は2019年4月1日に全規模の企業を対象に施行され、根拠となるのは労働基準法第39条です。義務の内容は、年間10日以上の有給休暇が付与されている従業員に、会社が年間5日以上の有給休暇を取得させる義務です。違反した場合は30万円以下の罰金(労働基準法第120条)が科され、規模・業種にかかわらずすべての会社が対象となります。

この義務化は、「従業員が年5日以上有給を取得しなかった場合、会社が罰せられる」という制度です。「従業員が有給を取得しなければいけない義務」というよりも、「会社が従業員に有給を5日以上取得させる義務」と理解しておくのが正確です。「有給休暇を取らなかった・取れなかった」ことで従業員が罰せられることはありません。問題が生じるのは会社側です。

義務化の対象者は?パート・アルバイトはどうなる?

有給休暇取得義務化の対象となるのは、「年間10日以上の有給休暇が付与されている従業員」です。雇用形態(正社員・パート・アルバイト等)に関係なく、この条件を満たせば義務化の対象となります。

正社員・フルタイム契約社員の場合

正社員・フルタイム勤務の契約社員は、雇い入れ日から6ヶ月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤すると有給休暇が付与されます。この条件を満たすと、入社から6ヶ月後に10日の有給休暇が付与され、10日以上付与された時点で義務化の対象となります。付与日数は継続勤務年数に応じて増え、勤続6ヶ月で10日、1年6ヶ月で11日、2年6ヶ月で12日、3年6ヶ月で14日、4年6ヶ月で16日、5年6ヶ月で18日、6年6ヶ月以上で20日が付与されます。

パート・アルバイトの場合

パート・アルバイトにも有給休暇は付与されます。ただし、週の勤務時間・勤務日数によって付与日数が異なります。次の3つのいずれかに当てはまる場合は、正社員・フルタイム契約社員と同じ日数の有給休暇が付与されます。すなわち、週の所定労働時間が30時間以上、週の所定労働日数が5日以上、1年間の所定労働日数が217日以上のいずれかです。この場合は入社6ヶ月後に10日の有給が付与され、義務化の対象となります。上記に当てはまらない(逰30時間未満かつ週4日以下勤務)場合は、次の「比例付与」の計算方法で有給休暇が付与されます。

パートの有給休暇付与日数(比例付与)

週の所定労働日数が4日以下・週の所定労働時間が30時間未満のパート・アルバイトは「比例付与」になります。付与日数の目安は次のとおりです。

週4日勤務(年間169~216日):勤続6ヶ月で7日、1年6ヶ月で8日、2年6ヶ月で9日、3年6ヶ月で10日、4年6ヶ月で12日、5年6ヶ月で13日、6年6ヶ月以上で15日。

週3日勤務(年間121~168日):勤続6ヶ月で5日、1年6ヶ月で6日、2年6ヶ月で6日、3年6ヶ月で8日、4年6ヶ月で9日、5年6ヶ月で10日、6年6ヶ月以上で11日。

週2日勤務(年間73~120日):勤続6ヶ月で3日、1年6ヶ月で4日、2年6ヶ月で4日、3年6ヶ月で5日、4年6ヶ月で6日、5年6ヶ月で6日、6年6ヶ月以上で7日。

週1日勤務(年間48~72日):勤続6ヶ月で1日、1年6ヶ月で2日、2年6ヶ月で2日、3年6ヶ月で2日、4年6ヶ月で3日、5年6ヶ月以上で3日。

義務化の対象となるパートの条件

上記の比例付与と照らし合わせると、「逰30時間未満かつ週4日以下勤務」の場合に義務化の対象となるのは、付与日数が年間10日以上になった時点からです。具体的には、週4日勤務(年間169~216日)のパートは入社3年6ヶ月後(付与日数が10日になる時点)から、週3日勤務(年間121~168日)のパートは入社5年6ヶ月後から義務化の対象となります。週2日・週1日勤務は付与日数が最大でも7日(週2日)・3日(週1日)のため、義務化の対象にはなりません。

わかりやすくまとめると、逰30時間以上または週5日以上(217日以上)のパートは入社6ヶ月後から、週4日(169~216日)・逰30時間未満のパートは入社3年6ヶ月後から、週3日(121~168日)・逰30時間未満のパートは入社5年6ヶ月後から義務化の対象となり、週2日以下・逰30時間未満のパートは義務化の対象外(ただし有給は付与される)となります。「義務化の対象外」でも有給休暇は付与されています。「対象外=有給がない」ではなく、「会社が取得を促す義務はないが、労働者が申請すれば取得できる権利はある」ということです。

会社が有給取得日を指定する2つの方法

自分で年5日以上の有給を申請・取得している場合は、従来通りの運用で問題ありません。問題になるのは、年間5日の取得基準に届かない従業員がいる場合です。その際、会社は次の方法で有給取得日を指定することができます。

①個人別付与方式

会社が従業員一人ひとりの有給取得状況を管理し、年5日の基準に届かない可能性がある従業員に対して個別に取得日を指定する方法です。従業員ごとに有給取得状況を管理するためきめ細かい対応ができ、従業員が希望する日程と調整しながら指定できるのが特徴です。たとえば「このままでは年5日の基準に届かないため、〇月〇日を有給休暇として指定します」という形で通知が来るイメージです。会社からこのような通知が来た場合、従業員は原則として指定された日に有給を取得しなければなりませんが、「どうしてもその日は出勤が必要」という理由がある場合は会社と相談のうえ日程を変更することも可能です。

②計画的付与制度

会社または部署単位で、事前に有給休暇を取得する日を決めてしまう制度です。この制度では会社と従業員代表(過半数代表者)の間で「労使協定」を締結する必要があり、お盆・年末年始・橋渡し休日(飛び石連休の間の平日)などをまとめて有給取得日にするケースが多いです。全員が一斉に取得するため「自分だけ休みにくい」という状況を防ぎやすいメリットがあります。ただし注意点として、計画的付与制度では「労使協定で定めた日」に有給を取得することが義務となるため、従業員個人の都合で日程を変えることが難しくなります。また、計画的付与で消化できるのは、有給休暇の付与日数のうち5日を超える部分のみで、5日分は従業員が自由に使える分として確保されます。

有給休暇を取れないときに知っておきたいこと

会社による「抜け道」に注意

有給休暇取得義務化に対して、会社側が「形の上では義務を果たしているが、実質的には有給を取らせていない」という不当な対応をするケースがあります。代表的なものを確認しておきましょう。

①もともと休日だった日を出勤日に変えて、有給消化したことにする:「お盆の〇日を出勤日にして、その日の有給を消化済みにする」という形です。本来の休日を奴って有給に充当するのは不当な取り扱いです。

②有給を申請したら翌日のシフトを削減される:「有給を取ったらシフトを減らされた」という事実上の嫌がらせです。法律上、有給取得を理由とした不利益な扱いは禁止されています。

③有給を申請しにくい雰囲気を作る:「忙しいのに有給を取るの?」「みんな我慢しているのに」という圧力をかけることで、事実上有給を取れない状況にする行為です。

④有給が付与されていることを従業員に伝えない:パートタイム労働者に対して「あなたには有給はありません」と虚偽の説明をするケースもあります。有給が付与されているにもかかわらず、この説明は完全に違法です。

有給を拒否された・取らせてもらえない場合の対処法

STEP1:自分の有給残日数・付与状況を確認する
まず、自分にどのくらいの有給が付与されているかを確認しましょう。給与明細・会社のシステム・人事担当者への問い合わせで確認できます。

STEP2:会社に有給取得の申請を正式に行う
口頭だけでなく、メールや書面で有給取得の申請をすることをおすすめします。「申請した事実の記録を残す」ことが後々の証拠になります。

STEP3:会社が拒否・嫌がらせをした場合は専門機関に相談する
会社が正当な理由なく有給取得を拒否したり、有給を取ったことで不利益な扱いをした場合は、都道府県労働局・労働基準監督署(有給休暇取得に関する申告・相談)、ハローワーク内の総合労働相談コーナー(労働問題全般)、法テラス(法律問題全般・収入条件あり)などの窓口に相談しましょう(いずれも無料)。専門的な対応・会社との交渉サポートが必要な場合は弁護士・社会保険労務士への相談(有料)も選択肢です。「有給を申請したら報復されそうで怖い」という場合は、まず匿名で労働局・労働基準監督署に相談することも可能です。

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2025年現在の有給休暇の実態と最新の動向

有給休暇取得率の改善状況

義務化以降、日本全体の有給休暇取得率は改善傾向にあります。厚生労働省の「就労条件総合調査」によると、有給休暇取得率は年々上昇しており、政府が目標とする「取得率70%」に向けて改善が進んでいます。

2025年現在も課題が残る分野

一方で、課題も残っています。まず、有給休暇義務化の対象であるパートタイム労働者への周知は、2025年現在も十分ではありません。「有給があることを知らなかった」「申請の仕方を教えてもらえなかった」という声は依然としてあります。また、大企業に比べて中小企業・個人事業主では有給取得の環境整備が遅れているケースがあり、「有給を取ると同僚に迷惑がかかる」「小さい職場で有給を申請しにくい」という状況は依然として多くの職場で見られます。

2025年以降の有給・休暇制度の注目点

2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、子どもの看護等休暇の対象が拡大され、柔軟な働き方への支援が強化されています。有給休暇と組み合わせて活用することで、子育て中の方がより休みを取りやすい環境が整いつつあります。

有給休暇に関するその他の重要ポイント

時間単位・半日単位での取得

有給休暇は1日単位での取得が原則ですが、会社と従業員代表の間で労使協定を締結することで、時間単位・半日単位での取得が可能になります。注意点として、時間単位取得は年間5日分(所定労働時間×5日)を上限として取得でき、時間単位で取得した有給は義務化の「年5日」にはカウントされません(日単位・半日単位で取得した有給のみがカウント対象)。半日取得は0.5日として計算されます。「保育園のお迎えのために午後2時間だけ有給を取りたい」という場面で時間単位の有給休暇が役立ちます。まず会社に「時間単位の有給取得が可能かどうか」を確認してみましょう。

有給休暇の繰り越し

使いきれなかった有給休暇は、翻年度に繰り越すことができます。ただし、繰り越し可能なのは「2年間」で、2年間で使用しなかった有給は時効消滅します。たとえば入社6ヶ月後に10日付与された場合、翻年1年6ヶ月後には前年分10日(繰り越し)と新たに11日が付与されて最大21日を保有しますが、翻々年2年6ヶ月後には入社6ヶ月後に付与された10日は時効消滅します。有給を「もったいないから取らない」と溢め込んでいると、古い有給から順番に消滅してしまうため、有給は計画的に、早めに消化することをおすすめします。

有給休暇の買い取りは原則禁止

「有給を使わなかった分を現金で買い取ってほしい」という要望、または会社から「有給は買い取るから取得しなくていい」という申し出があった場合でも、有給休暇の買い取りは原則として禁止されています。有給休暇の目的は「休息による心身の回復・充実したプライベートの確保」であり、現金に換算することで有給の本来の目的が失われてしまうためです。例外的に買い取りが認められるのは、退職時に残った有給を会社が任意で買い取る場合や、法律で定められた日数(最低付与日数)を超える部分を会社が独自に買い取る場合のみです。

よくある質問(Q&A)

Q. パートを始めたばかりです。いつから有給休暇が使えますか?
A. 雇い入れの日から6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤することで有給休暇が付与されます。逰30時間以上または週5日以上勤務の場合は10日、それ以下の場合は所定労働日数に応じた日数が付与されます。6ヶ月未満の期間は有給が付与されないため、入社時の勤務条件を確認しておきましょう。

Q. 有給休暇の申請理由を会社に聞かれました。答えなければいけませんか?
A. 原則として、有給休暇の取得理由を会社に伝える義務はありません。「私的な事情によるため」と伝えるだけで問題ありません。会社が業務上の必要性から「時季変更権(別の日への変更を申し出る権利)」を行使する場合はありますが、理由を強制的に開示させることは法律上認められていません。

Q. 有給を取ったら評価が下がると言われました。これは合法ですか?
A. 違法です。有給休暇の取得を理由とした不利益な扱い(評価の引き下げ・シフトの削減・昇給・昇格への影響など)は、労働基準法で禁止されています。このような扱いを受けた場合は、労働基準監督署・労働局に相談しましょう。

Q. 週2日しか働いていないパートでも有給はもらえますか?
A. はい、もらえます。週2日勤務(年間73~120日)の場合、入社6ヶ月後に3日の有給が付与されます。付与日数が10日未満のため有給取得義務化の対象にはなりませんが、「有給がない」わけではありません。申請すれば取得できる権利があります。

Q. 有給を年5日取らないと従業員も罰せられますか?
A. いいえ、従業員が罰せられることはありません。年5日の有給取得義務に違反した場合に罰せられるのは会社(30万円以下の罰金)です。「5日取れなかった」ことで従業員が何らかの不利益を受けることは法律上ありません。

まとめ

有給休暇取得義務化は2019年4月から全企業で施行され、会社が年5日以上の有給を従業員に取得させる義務があります。違反した会社には30万円以下の罰金が科されます。対象は年間10日以上の有給が付与されている従業員で、雇用形態(正社員・パート等)は関係ありません。パートの有給付与日数は勤務日数・勤務時間・継続年数によって変わるため、比例付与の日数を確認しましょう。週2日以下のパートは義務化対象外ですが、有給は付与されているため申請して取得できます。会社が有給取得日を指定する方法は個人別付与方式と計画的付与制度の2種類です。「もともとの休日を出勤日に変えて有給消化する」などの会社の抜け道・不当な取り扱いには注意が必要です。有給取得を拒否されたり嫌がらせを受けた場合は、労働基準監督署・労働局・法テラスに相談しましょう。有給は2年で時効消滅するため、計画的に早めに消化することが大切です。なお、有給休暇の買い取りは原則禁止(退職時の残有給買い取りなど例外あり)です。

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