人間関係を理由に仕事を辞める時に注意したいポイント

職場の人間関係で仕事を辞める前に知っておきたいこと|見極め方・相談先・円満退職のポイント

「毎日職場に行くのがつらい」「上司からの理不尽な扱いに心がすり減っている」「職場になじめず、いつも孤独感がある」——仕事を辞めたい理由として、多くの方が挙げるのが人間関係です。

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、女性が前職を辞めた理由として最も多かったのは「職場の人間関係が好ましくなかった」(13.0%)で、この割合は前年からさらに上昇しています。

一方で、「人間関係」を理由に退職することには独特の悩みもつきまといます。「辞めにくい」「次の転職活動に響くのではないか」「わがままだと思われないか」という不安を抱える方は少なくありません。しかし、人間関係の悩みは時に心身の健康を大きく損なうほど深刻なものになることがあります。我慢を続けるべきかどうかを正しく見極め、必要であれば適切な行動を取ることが何よりも大切です。

この記事では、仕事を辞めたくなる人間関係の悩みのパターン、辞める前にできること、相談できる窓口、円満退職のためのポイントまでをわかりやすく解説します。

「人間関係」を理由にした離職は、実はとても多い

職場の人間関係で仕事を辞める前に知っておきたいこと

厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」によると、転職者(前職を辞めて新しい職に就いた人)が前職を辞めた理由として、女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」が13.0%で最多となっています。この数字は前年から2.6ポイント上昇しており、増加傾向にあることがわかります。

年代別に見ても、19歳以下・30〜34歳・35〜39歳・45〜49歳・55〜59歳の女性で「職場の人間関係が好ましくなかった」が離職理由のトップに挙がっており、年代を問わず多くの女性が人間関係を理由に離職していることが読み取れます。

「人間関係が理由で辞めるなんて、自分だけがわがままなのでは」と感じてしまう方も多いですが、実際には非常に多くの人が同じ理由で仕事を辞めています。まずはこの事実を知っておくことで、必要以上に自分を責める気持ちを和らげることができるでしょう。

仕事を辞めたくなる人間関係の悩み、4つのパターン

一口に「人間関係」と言っても、その状況はさまざまです。会社を辞めたくなる人間関係の悩みには、主に次のようなパターンがあります。

①パワーハラスメントを受けている

「パワハラ(パワーハラスメント)」は、厚生労働省により「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義されています。

  • 行き過ぎた説教・暴言
  • 断れない状況に追い込んで仕事を押し付ける
  • 嫌がらせ
  • 意図的に評価を下げるなどの不当な扱い
  • ミスを他人に擦り付ける
  • 必要以上に無視をする・仲間外れにする

ポイントは、こうした行為をする人物が「上司・先輩など、自分より立場が上の人」であるという点です。立場が上の人からこうした不当な扱いを受けた場合、社内に相談できる人がいなかったり、なかなか解決に至らなかったりして、結果的に会社を辞めてしまう方が多いのが実情です。中小企業も含めたすべての企業に「パワハラ防止措置」が法律で義務付けられているため、まずは自社の相談窓口の有無を確認してみましょう。

②いじめを受けている

パワハラと似ていますが、こちらは立場の上下は関係ありません。悪口・暴力・嫌がらせのほか、仕事の押し付け・ミスの擦り付けなど、肉体的・精神的な苦痛を与える行為を「いじめ」といいます。個人の尊厳を傷つけるいじめは学生同士のものが取り上げられがちですが、残念ながら社会人同士でも存在しています。環境をがらりと変えなければ解決しない場合もあり、会社の理解が得られない際には退職せざるを得ないこともあります。

③セクシュアルハラスメントを受けている

性別に関わらず、性的で不快に感じる言動をされたり、就業環境を害されることを「セクハラ(セクシュアルハラスメント)」といいます。また、性的な行為などを強要され拒否した際に、労働条件などで不当な扱いを受けることもセクハラの一つです。

  • 性的な事実関係を尋ねる、性的な内容の噂を広める
  • 性的な冗談を言う・からかう、食事やデートへ執拗に誘う
  • 個人的な性的体験談を話す
  • 性的な関係を強要する、必要なく体に触れる
  • わいせつな絵・写真を配布・掲示する、強制わいせつ行為・強姦

セクハラは働く個人の尊厳を傷つける、決して許されない行為です。雇用機会均等法により、会社はセクハラを防止し、発生した際には適切な処置を施さなければならないと定められています。一方で、セクハラの被害に遭うと恥ずかしさから相談しにくく、結果的に会社を辞めざるを得なくなってしまうケースも少なくありません。

④職場になじめない

「なんとなくみんなの輪に入れない」「職場になじめない」というのも、退職を考える人間関係の悩みの一つです。チームで協力して働けない、職場の雰囲気がギスギスしている、疎外感を感じてしまう——こうした状況の中で長く働き続けるのは、簡単なことではありません。社会人として割り切って働くことも大切ですが、できることなら和気あいあいとした雰囲気の中でお互いを高め合える環境で働きたいものです。

近年注目される「カスタマーハラスメント」

パワハラ・セクハラに加えて社会的に注目が高まっているのが「カスタマーハラスメント(カスハラ)」です。お客様・取引先からの過度なクレーム・暴言・不当な要求など、社外からの人間関係のストレスも深刻な離職理由の一つとして認識されるようになっています。

改正労働施策総合推進法にはカスハラへの相談体制の整備等を企業に義務付ける規定が盛り込まれており、今後段階的に施行される見込みです。接客業・サービス業で働く方は、こうした動向にも注目しておきましょう。

仕事を辞める前に、一度立ち止まって考えたいこと

「人間関係に悩むから、もう仕事を辞めてしまおう」とつい考えてしまうこともあるでしょう。しかし、その悩みはもしかしたら辞めなくても解決できるかもしれません。

「続けていけるか」を天秤にかけてみる

まずは、悩みと仕事を天秤にかけ、今後も続けていけるかどうかを考えてみましょう。次のように感じるなら、辞める前に一度立ち止まってみる価値があります。

  • 今の仕事が好き
  • 仕事のために悩みを割り切れる
  • 悩みとは感じるが、耐えられないほどではない

このように感じるのであれば、もし仕事を辞めた場合、後で後悔することがあるかもしれません。何が何でも辞めてしまいたいのか、仕事に未練はないか、辞める以外に最良の選択肢はないかを、じっくり見極めてから決断しましょう。一方で、パワハラ・セクハラ・いじめなど、心身の健康を損なうレベルの深刻な状況にある場合は、無理に続ける必要はありません。「我慢すること」が美徳ではないことも、忘れないようにしましょう。

社内外の信頼できる人に相談する

辞めるべきか否か決めかねる場合は、まず信頼できる人に相談してみましょう。誰かに話すことで自分の中で考えが整理できたり、自分自身を客観視できたりします。また、思いもよらない解決方法が見つかることもあります。

  • 家族・パートナーへの相談
  • 職場以外の友人への相談
  • 信頼できる同僚・先輩への相談

一人で抱え込まず、まずは声に出して話してみることから始めましょう。

人事部・専門窓口に相談する

特にパワハラ・セクハラ・いじめなど、環境を変えれば解決しそうな悩みの場合は、人事部への相談も選択肢の一つです。異動・転勤を願い出るのも一つの方法です。新しい部署・新しい勤務地へと環境を変えることで、新たに人間関係を築くことができるかもしれません。

また、セクハラの場合、会社によってはセクハラ専用の相談窓口を設置していることもあります。相談すれば、事実をきちんと確認した上で適切な処置が取られるはずなので、悩みの解決につながる可能性があります。社内に窓口がない場合は、外部の相談窓口を活用しましょう。

利用できる主な外部相談窓口

社内での相談が難しい場合や社内の対応に納得できない場合は、次のような外部の相談窓口を活用することができます。

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内):パワハラ・セクハラ・いじめなど労働問題全般の相談。無料
  • こころの耳(厚生労働省):働く人のメンタルヘルス相談窓口。無料
  • ハラスメント悩み相談室(厚生労働省委託事業):パワハラ・セクハラなどの専門相談窓口(電話・SNS)。無料
  • 法テラス(日本司法支援センター):法律問題全般の相談・弁護士紹介。無料(収入条件あり)
  • 弁護士・社会保険労務士:専門的な対応・会社との交渉サポート。有料(事務所による)

一人で抱え込まず、まずはこうした窓口に相談してみることをおすすめします。匿名での相談を受け付けている窓口も多くあります。

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仕事を辞めると決めた場合の注意点

仕事を辞めると決めた場合、辞め方にも注意が必要です。禍根を残すことのないよう、円満退職を目指しましょう。

早めに退職を伝える

会社の規定によって告知から退職までの期間はさまざまですが、法律上は、退職の意思を伝えてから2週間で退職することができます(民法第627条)。しかし忘れてはならないのが「仕事の引き継ぎ」があるということです。職場から1人いなくなると、その分の仕事は別の誰かが引き継がなくてはなりません。自分の日々の業務をこなしながら、新たに引き継ぎ分の仕事を教わり、こなせるようになるためにはある程度の時間が必要です。

場合によっては、会社が代わりの人員を補充しなければ仕事を引き継げない、ということもあります。遅くとも1カ月前には「辞めたい」という意思を伝え、余裕を持って退職できるようにしましょう。

辞める理由は前向きなものを選ぶ

退職を伝える際、どのような理由を伝えるかは悩むことの多いポイントです。人間関係が原因の場合、理由をそのまま伝えてもよいですが、時には角が立ってしまうこともあります。世間は意外と狭いもので、思いもよらぬところでその会社の人とまたご縁がある、ということもあるかもしれません。なるべく角が立たないように伝えるのが賢明です。

また、引き止められてしまい辞めるに辞められない、ということもあり得ます。辞めたい理由には、「今の仕事とは別にやりたいことができたから」「〇〇にチャレンジしたいから」というように、前向きで、かつ辞めたい強い意志があると伝わるものを選んでおくのが無難です。ただし、深刻なパワハラ・セクハラなど法的な問題を含む場合は、事実を正確に伝えることも重要な選択肢の一つです。状況に応じて、正直に伝えるべきか、角が立たない伝え方を選ぶべきかを判断しましょう。

転職活動で「人間関係」が理由だったことをどう伝える?

「人間関係」を理由に転職活動をする際、面接でどう伝えればよいか悩む方は多いです。「人間関係が原因で何度も転職している」という印象は、採用担当者にマイナスの印象を与えてしまうことがあります。

  • 前職・前々職への批判・愚痴にならないよう注意する
  • 「〇〇な環境が合わなかった」という事実を簡潔に伝え、深掘りしすぎない
  • 「今後はこういう環境で、こう働きたい」という前向きな希望とセットで伝える
  • パワハラ・セクハラなど客観的な事実がある場合は、感情的にならず冷静に事実を伝える

「人間関係が理由で転職を繰り返している」と正直に思われることを恐れるあまり、嘘をつく必要はありません。大切なのは、「同じ状況を繰り返さないために、今後どんな環境で働きたいか」を明確に伝えることです。一人でこの伝え方を考えるのが難しい場合は、転職エージェントに相談することで、自分の状況に合った伝え方のアドバイスを受けることができます。

よくある質問

Q. パワハラを受けているか判断に迷います。どう見極めればいいですか?

A. 「業務の適正な範囲を超えているかどうか」が一つの判断基準です。指導・注意そのものは業務上必要な場合がありますが、人格を否定する暴言・長時間の説教・仕事を意図的に与えないなどの行為は、業務の適正な範囲を超えていると考えられます。判断に迷う場合は、総合労働相談コーナーなどの専門窓口に相談することをおすすめします。

Q. 上司に相談しても改善されません。どうすればいいですか?

A. 直属の上司が加害者本人、またはうまく機能しない場合は、さらに上の上司・人事部・社内の相談窓口に相談することを検討しましょう。社内での改善が見込めない場合は、労働局の総合労働相談コーナーなど外部の窓口に相談することも有効です。

Q. 退職理由が「人間関係」だと、転職活動で不利になりますか?

A. 「人間関係が理由で何度も転職している」という印象を与えると、不利になる可能性はあります。ただし、伝え方を工夫すること(前向きな言葉に変換する、今後の希望とセットで伝える)で印象を大きく変えることができます。深刻なハラスメントが理由の場合は、正直に事実を伝えることが誠実さとして評価されることもあります。

Q. 退職を伝えたら強く引き止められました。どうすればいいですか?

A. 法律上、退職の意思を伝えてから2週間で退職することが認められています。強い引き止めがあっても、自分の意思が固い場合は、丁寧かつ毅然とした態度で伝え続けることが大切です。しつこい引き止め・退職を認めないなどの対応がある場合は、労働基準監督署などに相談することもできます。

まとめ

  • 厚生労働省の令和5年雇用動向調査によると、女性の離職理由トップは「職場の人間関係が好ましくなかった」(13.0%)で、多くの人が同じ理由で退職している
  • 仕事を辞めたくなる人間関係の悩みは主に①パワハラ②いじめ③セクハラ④職場になじめない、の4パターン
  • カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応も企業の義務として法整備が進んでいる
  • 辞める前に、続けていけるかを天秤にかけて考える、信頼できる人に相談する、人事部や専門窓口に相談するというステップを踏むことが重要
  • 相談窓口には総合労働相談コーナー・こころの耳・ハラスメント悩み相談室・法テラスなど無料で使えるものが多くある
  • 辞めると決めた場合は遅くとも1カ月前には意思を伝え、円満退職を目指す
  • 退職理由は前向きな言葉で伝えることが無難だが、深刻なハラスメントの場合は事実を正確に伝えることも選択肢
  • 転職活動での伝え方は「今後どう働きたいか」という前向きな希望とセットにすることがポイント
  • 一時の感情や勢いで辞めるのではなく、一度落ち着いて辞めるべきかどうかを見極めてから決断することが大切

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