「同一労働同一賃金って聞いたことあるけど、パートの自分には関係あるの?」
「正社員と同じ仕事をしているのに賞与も通勤手当も出ない。これって違法?」
「無期転換ルールで無期契約にしたら、かえって損することがあるって本当?」
2020年(大企業)・2021年(中小企業)から完全施行された「同一労働同一賃金」制度は、パートタイム・有期雇用労働者の待遇を正社員と不合理に差をつけることを禁止する重要なルールです。
施行から数年が経過した2025年現在、「制度があることは知っているが、実際に自分の職場でどう適用されるのかわからない」「正社員と待遇に差があるけど、これは違法?合法?」という疑問を持つパートタイム労働者の方は依然として多くいます。
この制度を正しく理解することで、「もらえるはずの手当がもらえていない」「本来受けられるはずの福利厚生が使えない」という状況に気づき・改善を求める権利を行使できるようになります。
この記事では、同一労働同一賃金の仕組み・具体的な待遇改善の内容・2025年現在の実態・無期転換ルールとの関係・「不合理な待遇差があると感じたとき」の対処法まで、わかりやすく徹底解説します。
同一労働同一賃金とは?(わかりやすく解説)
同一労働同一賃金とは、同じ会社で働く正社員(通常の労働者)と非正社員(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)の間に、不合理な待遇の差をつけることを禁止するルールです。「正社員だから・非正社員だから」という雇用形態だけを理由にした差別的な待遇は許されず、それぞれの「仕事の内容・役割・状況」に応じた公正な待遇が求められます。根拠となる法律は「パートタイム・有期雇用労働法」(改正法)で、2020年4月(大企業)・2021年4月(中小企業)から全面施行されています。このルールには「均等待遇規定」と「均衡待遇規定」といゆ2つの判断基準があります。
均等待遇規定(差別的取り扱いの禁止)
①職務内容(業務の内容+責任の程度)と、②職務内容・配置の変更の範囲(転勤・異動・昇進の可能性)の2つの要素が正社員と同じ場合は、待遇も同じにしなければなりません。この2つが完全に同じであれば、「正社員だから賞与が出て、パートだから出ない」という差は禁止されます。ただし注意点として、仕事における成果・能力・経験の差による賃金の差は許容されます。「同じ業務をしていても、スキルや経験の差で給与が異なる」のは問題ありません。問題なのは「非正社員というだけで差別的な待遇をすること」です。
均衡待遇規定(不合理な待遇差の禁止)
①職務内容(業務の内容+責任の程度)、②職務内容・配置の変更の範囲、③その他の事情(採用経緯・労働市場の状況なども含む)の3つの要素を考慮した場合に、正社員と非正社員の間に「不合理な待遇差」をつけることが禁止されます。均衡待遇規定は「①②が異なる場合でも、その差に見合った待遇でなければならない」という考え方です。まとめると、職務内容と配置変更の範囲が正社員と同じパート・有期社員には同一の待遇が求められ(均等待遇)、これらが異なる場合はその違いに応じた不合理でない待遇が求められます(均衡待遇)。
待遇ごとの改善内容を詳しく解説
厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、各待遇の適切な取り扱い・不合理な取り扱いの例が具体的に示されています。自分に関係する待遇を確認してみましょう。
①基本給
基本給の支払い基準は主に3種類あります。能力・経験に応じて支給する場合は同じ能力・経験なら正社員と同額の支給が必要で、業績・成果に応じて支給する場合は同じ貢献度なら同額の支給が、勤続年数に応じて支給する場合は同じ勤続年数なら同額の支給が求められます。「正社員より勤続年数が短い」「担当業務の責任が軽い」など、合理的な理由に基づく差なら認められますが、「非正社員だから」という理由だけで不合理に低い基本給を設定することは禁止です。
②賞与・ボーナス
業績などへの貢献に応じて支給される賞与については、正社員と非正社員で貢献度が同じであれば同一の賞与を支給することが求められます。例えば「正社員は業績に応じた賞与が支給されているが、同様の業績貢献があるにもかかわらずパートは全く支給されていない」というケースは不合理な待遇差として問題になる可能性があります。「パートだから賞与なし」という会社に長年勤めていた方が、制度施行後に賞与を受け取れるようになったケースもあります。
③各種手当
支給が求められる主な手当には、業務の危険度・作業環境に応じた特殊作業手当、交替制など勤務形態に応じた特殊勤務手当、出勤状況に応じた精皆勤手当、残業に対する時間外労働手当(割増賃金)、深夜・休日労働手当、通勤手当・交通費、食事手当、単身赴任手当、地域手当などがあります。これらの手当は、支給要件を満たしている場合に正社員と同様に支給されなければなりません。特に注目すべきは「通勤手当」です。これまで「パートだから交通費が出ない」と当然のように思っていた方も、同じ職場に通勤するという要件を満たしている場合は、通勤手当(交通費)を受け取れる可能性があります。
④福利厚生
給食施設(社員食堂)・休憩室・更衣室などの福利厚生施設は、正社員・非正社員を問わず、業務上利用する必要がある場合は利用を認めなければなりません。「正社員じゃないから社員食堂が使えない」「パートは休憩室を使えない」という状況は不合理な待遇差として問題になります。また、転勤者用社宅についても、転勤の有無・扶養家族の有無・住宅の賃貸・収入の額などの支給要件を満たしている場合は、正社員・非正社員を問わず利用できなければなりません。
⑤休暇
慶弔休暇(冠婚葬祭に伴う休暇)・病気休暇などは、正社員・非正社員を問わず同様に取得できなければなりません。また、法定外(会社独自)の休暇で勤続年数に応じて付与されているものについては、正社員と非正社員で差をつけてはいけません。「パートだから結婚休暇が取れない」「非正社員だから病気欠勤が無給扱いになる」という状況は、不合理な待遇差として問題になる可能性があります。
⑥教育訓練
同じ業務内容に従事している場合、その業務に必要なスキル・知識を習得するための教育訓練は、正社員・非正社員を問わず同様に参加できなければなりません。「正社員だけスキルアップ研修に参加できて、パートは対象外」という状況は問題になります。自社の研修制度がパートタイム社員にも開放されているかを確認してみましょう。
2025年現在の同一労働同一賃金の実態
施行から数年が経過した2025年現在、同一労働同一賃金の実態はどうなっているのでしょうか。大手企業・上場企業では、同一労働同一賃金の対応が比較的進んでおり、手当の整備・賞与の支給ルールの見直し・教育研修の対象拡大などが実施されている企業が増えています。一方、2021年4月から施行された中小企業では対応状況に大きな差があり、制度を十分に整備している会社がある一方で「制度は知っているが、具体的な対応ができていない」という会社もまだあります。また、「どの程度の差が不合理か」という判断は事例ごとに異なり、簡単に白黒つけられないケースが多く、2025年現在も複数の最高裁判例が積み重なり、「何が不合理な待遇差か」の基準が少しずつ明確になってきています。
近年の最高裁判例から明らかになった重要なポイントとして、賞与・退職金のゼロ支給は合理的な理由がない限り不合理と判断される可能性があること、通勤手当・皆勤手当は同じ要件であれば正社員と同様の支給が求められること、「基本給の差」は合理的な理由(職務・責任・経験の差)がある場合は認められることが挙げられます。「自分の職場の待遇に問題がないか」を判断するためには、具体的な状況を専門家(社会保険労務士・労働局)に相談することも有効です。
自分の待遇について会社に「説明を求める権利」がある
パートタイム・有期雇用労働法の改正では、待遇改善の義務付けとともに、企業に対して従業員への「待遇に関する説明義務」が強化されました。これにより、パートタイム・有期雇用労働者は自分の待遇の内容とその決め方、正社員と自分の待遇の間に差がある場合はその内容と理由について、会社に説明を求めることができます。重要なポイントとして、会社は説明を求められた場合拒否することができず、説明を求めた労働者に対して評価を下げる・シフトを減らすなどの不利益な取り扱いを行うことは禁止されています。「なぜ自分には賞与が出ないのか」「なぜ通勤手当が支給されないのか」という疑問がある場合、まず上司・人事担当者に「待遇についての説明をお願いしたい」と申し出ることが第一歩です。
「自分の待遇について相談したい・働き方について一緒に考えてほしい」という方へ
しごと計画学校では、パートの待遇に関する相談から就職・転職活動全般まで完全無料でマンツーマンサポートしています。「今の職場の待遇に疑問がある」「もっとよい待遇の職場に転職したい」というご相談もお気軽にどうぞ。
注意点①:対象外になるケースがある
同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)は、すべての非正社員が対象になるわけではありません。対象となるのは2種類で、パートタイム労働者(同一の事業主に雇用される通常の労働者と比べ、1週間の所定労働時間が短い労働者)と、有期雇用契約労働者(雇用期間に定めのある契約社員・アルバイトなどの労働者)です。一方で、フルタイム勤務かつ無期雇用契約の場合は対象外です。たとえ「パート」「アルバイト」という名称で雇用されていても、通常の労働者(正社員)と同じフルタイム勤務で、かつ雇用期間に定めのない無期労働契約である場合はパートタイム・有期雇用労働法の対象外となります。「フルタイムパート」として長年勤めている方の中にはこのケースに該当する方もいます。自分の雇用契約の条件を確認しておきましょう。
注意点②:無期転換ルールとの関係
2018年4月から施行されている「無期転換ルール」は、有期労働契約で通算5年を超えて継続雇用された場合、労働者の申し込みにより無期労働契約(期間の定めのない契約)に転換できる制度です。この無期転換ルールと同一労働同一賃金には、重要な関係があります。有期契約(パートタイム)のうちは同一労働同一賃金の対象ですが、有期契約からフルタイムで無期転換した後は対象外となり、一方でパートタイムのまま無期転換した場合は引き続きパートタイム労働者として対象となります。つまり、フルタイムで有期雇用として働いている方が無期転換を行うと、同一労働同一賃金の対象から外れてしまう可能性があります。
無期転換を行うことで雇用の安定性(契約が更新されない不安がなくなる)というメリットがある一方、フルタイムで働いている場合は同一労働同一賃金の対象から外れることがあります。無期転換を検討する際は、現在の待遇(賞与・手当)が同一労働同一賃金によって改善されている・または改善が見込まれるか、無期転換後の雇用条件(給与・手当・待遇)は変わるか、無期転換後も「パートタイム」として働く場合は引き続き対象になるか、といった点を事前に確認しましょう。「無期転換した方がお得か、有期雇用のまま同一労働同一賃金を活用する方がお得か」は個人の状況によって異なります。判断に迷う場合は、社会保険労務士や労働局の相談窓口に問い合わせてみましょう。
「不合理な待遇差がある」と感じたときの対処法
「自分の職場の待遇に同一労働同一賃金に違反する不合理な差があると感じる」という場合の対処法を整理しておきましょう。
STEP1:まず自分の雇用条件・待遇を整理する
雇用形態(パートタイム・有期雇用・フルタイムかどうか)、自分の業務内容・責任の範囲、現在受け取っている賃金・手当・福利厚生の詳細、正社員の待遇(公開されている範囲で)を整理しましょう。
STEP2:会社に説明を求める
まず会社(上司・人事担当者)に「待遇についての説明をお願いしたい」と申し出ましょう。会社には説明義務があります。「なぜ自分には賞与が支給されないのか」「なぜ通勤手当がないのか」という質問に対して、会社が合理的な理由を説明できない場合は問題がある可能性があります。
STEP3:専門機関に相談する
会社に説明を求めても改善されない・合理的な回答が得られない場合は、専門機関に相談しましょう。都道府県の労働局(雇用環境・均等部)はパートタイム・有期雇用に関する相談・助言・指導を無料で受け付けており、ハローワークや都道府県の労働委員会(労使間トラブルのあっせん)も無料で利用できます。より専門的なアドバイス・会社との交渉補助が必要な場合は社会保険労務士(社労士)への相談も選択肢です(有料の場合あり)。特に都道府県の労働局(雇用環境・均等部)は、パートタイム・有期雇用労働法に関する相談を専門に受け付けており、無料で相談できます。
STEP4:転職という選択肢も視野に入れる
「今の職場では改善が難しい」という場合は、より良い待遇の職場への転職という選択肢もあります。2025年現在、同一労働同一賃金への対応を積極的に進めている企業・くるみんマーク取得企業など、非正社員にも手厚い待遇を整えている職場は増えています。
よくある質問(Q&A)
Q. 同一労働同一賃金は、私のような短時間パートにも関係しますか?
A. はい、関係あります。週数時間のパートタイム労働者・有期雇用契約の方はパートタイム・有期雇用労働法の対象です。通勤手当・各種手当・福利厚生施設の利用・慶弔休暇などは、支給要件を満たす場合は正社員と同様に適用されなければなりません。まず自社の待遇を確認してみましょう。
Q. パートでも賞与(ボーナス)をもらえる可能性がありますか?
A. はい、可能性はあります。正社員が業績・貢献に応じた賞与を受け取っているにもかかわらず、同等の貢献をしているパートが全く賞与を受け取っていない場合は不合理な待遇差として問題になる可能性があります。ただし「正社員は転勤・残業など広い職務に応じた賞与」「パートは限定された職務」という差がある場合は、その差に応じた賞与の差が認められることもあります。まず会社に確認することをおすすめします。
Q. 通勤手当がパートには出ていません。これは違法ですか?
A. 通勤手当・交通費は、同一の業務に就いて同じように通勤している場合、正社員と非正社員で同様に支給されなければなりません。「パートだから交通費なし」という扱いは、原則として不合理な待遇差として問題になる可能性が高いです。まず会社に確認し、改善されない場合は労働局に相談しましょう。
Q. 有期雇用で5年以上勤めています。無期転換すべきですか?
A. 一概には言えません。無期転換には「雇用が安定する」というメリットがある一方、フルタイムで働いている場合は同一労働同一賃金の対象から外れる可能性があります。また、無期転換後の給与・待遇が変わるかどうかも確認が必要です。「無期転換の申し込みをする前に、会社に転換後の雇用条件を確認する」ことを強くおすすめします。判断に迷う場合は労働局・社労士に相談しましょう。
Q. 会社に待遇の説明を求めたら、シフトを減らされそうで怖いです。
A. 説明を求めた労働者に対して、シフトの削減・評価の引き下げなどの不利益な取り扱いを行うことは法律で禁止されています。「説明を求めたこと」を理由とした不利益な扱いがあった場合は、それ自体が法律違反です。不安な場合は、まず労働局・社労士に匿名で相談することも可能です。
まとめ
同一労働同一賃金は、正社員と非正社員の間の不合理な待遇差を解消するためのルールで、2021年4月から中小企業も含め全面施行済みです。判断基準は「均等待遇規定」(同じ職務・配置の変更範囲なら同一待遇)と「均衡待遇規定」(違いがあっても不合理でない待遇)の2種類です。改善が求められる待遇は基本給・賞与・各種手当(通勤手当含む)・福利厚生・休暇・教育訓練などで、通勤手当・精皆勤手当・慶弔休暇などは支給要件を満たす非正社員にも正社員と同様に適用される必要があります。2025年現在は大企業では対応が進む一方、中小企業では対応状況に差があるのが実態です。パートタイム・有期雇用労働者には会社に待遇の説明を求める権利があり、会社は拒否できず、説明を求めたことへの報復も禁止されています。なお、同一労働同一賃金の対象外になるのは「フルタイムかつ無期雇用」の非正社員で、無期転換ルールでフルタイム勤務者が無期転換すると対象から外れる可能性があるため、転換前の条件確認が必要です。不合理な待遇差があると感じたら、①会社に説明を求める②都道府県労働局に相談する③社労士に相談するという順で対処しましょう。
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