「育休から戻ったら、担当していた仕事が別の人のものになっていた」「時短にした途端、責任あるポジションから外された」——産休・育休を経て復帰したママの多くが、こうした違和感を経験します。
この状態は「マミートラック」と呼ばれ、働くママにとって長年の課題となってきました。この記事では、マミートラックの意味や起きる原因、当事者が感じる苦しさ、2025年時点の法制度の変化、陥らないための対策、抜け出すための選択肢、そしてあえてその働き方を選ぶという視点まで整理して解説します。
マミートラックとは
マミートラックとは、産休・育休から復帰したママが、本人の意思にかかわらず責任の軽い業務ばかりを担当させられ、昇進・昇給の機会から遠ざかってしまう状態を指す言葉です。陸上競技の周回コース(トラック)になぞらえ、同じ場所をぐるぐる回らされるイメージから名付けられました。
元はアメリカで生まれた言葉で、当初は「本人の意思で家庭を優先する働き方」を指していましたが、現在では本人の意思に関係なくキャリアの停滞を強いられる状況を指す、否定的な意味合いで使われることが多くなっています。
マミートラックのサイン
- 復帰後に担当業務が大きく変わり、責任が軽くなった
- 重要な会議やプロジェクトへの参加機会が減った
- 「無理しなくていいよ」と言われる場面が増えた
- 同期・後輩が昇進していく一方で自分は変わらない
- 「もっとやりたい」と伝えても「時短だから」で流される
マミートラックが起きる4つの原因
育休中の長期不在によって担当業務が他の人に定着してしまうこと、時短勤務が「残業できない=重要な仕事を任せにくい」という評価につながること、子どもの急な体調不良による欠勤が続くことで重要な役割を任せづらいと判断されること、そして上司や同僚の「育児中は負担を減らしてあげよう」という善意が、本人の意思に反して軽い業務に留め置く結果を招くことなどが主な原因として挙げられます。特に最後の「善意による思い込み」は、悪気がないぶん本人が声を上げにくく、根深い問題になりがちです。
マミートラックで感じる3つの苦しさ
①責任あるポジションから外される
これまで積み上げてきたスキルを活かしたいと思っていても、補助的な業務ばかりが回ってくることで「自分は必要とされているのか」という自信の喪失につながることがあります。
②昇進・昇給の機会が失われる
評価の対象になる機会自体が減ることで昇進・昇給が難しくなり、モチベーションの低下や家計への影響という形でも表れます。同期や後輩が先に昇進していく様子を見ることは、精神的にも大きな負担になります。
③職場での孤立感
時短勤務や急な欠勤への申し訳なさから、「自分だけ違う」という孤立感が生まれ、居心地の悪さが積み重なっていくことがあります。
2025年時点の法制度・社会の変化
2025年4月に改正育児・介護休業法が施行され、子どもが3歳から小学校就学前までの間についても、所定外労働の制限やテレワーク、短時間勤務などの措置を講じることが企業に義務付けられました。従来は3歳未満が対象だった時短勤務の権利が広がり、柔軟な働き方を選びやすい環境が整いつつあります。あわせて男性の育休取得が推進され、「育休はママだけの問題」という意識も変わりつつあります。女性活躍推進法により、企業には女性管理職比率などの情報公開も求められるようになりました。ただし、制度が整っても現場の意識や職場文化の変化が追いついていない職場が依然として多いのが実情です。
マミートラックに陥らないための4つの対策
①育休前にキャリアプランを明確にしておく
「時短期間が終わったらフルタイムに戻る」「〇年後にはこのポジションを目指す」など、大まかな方向性を持っておくだけでも、流されてしまうリスクを減らせます。
②上司に自分の意思を伝えておく
「子どもができても前線で仕事を続けたい」という意思を、育休前や復帰後の面談で日常的に伝えておくことで、周囲の思い込みによる配慮を防ぎやすくなります。
③自分がいなくても回る体制を作る
業務のマニュアル化やチーム内での情報共有を進めておくことで、急な欠勤があっても信頼を損なわず、復帰後に責任ある業務を任せてもらいやすくなります。
④会社の制度・実績を事前に確認する
育休取得後に管理職になった女性社員がいるか、時短勤務者の昇進実績はあるかなど、実際に制度が使われているかどうかを確認しておくことが重要です。
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マミートラックから抜け出す3つの選択肢
①上司・人事に直接相談する
「不満を言う」のではなく「自分のビジョンを伝える」というスタンスで、「このプロジェクトに関わりたい」といった建設的な提案として伝えることが大切です。育休・時短勤務取得を理由とした不利益な扱いは法律で禁止されているため、明らかな違反がある場合は社内の相談窓口も活用しましょう。
②社内異動を申し出る
今の部署で状況が改善しない場合、社内公募制度などを活用して部署を変えることも有効な選択肢です。
③転職を検討する
社内での交渉が難しい場合は転職も選択肢のひとつです。女性活躍推進や子育て支援の実績がある企業を条件に加え、転職エージェントに相談しながら、「不満から逃げる転職」ではなく「なりたい自分のための転職」という軸で進めることが大切です。
あえてマミートラックを走るという選択
マミートラックには否定的なイメージがつきまといますが、すべてのママにとってマイナスとは限りません。「今は子育てを優先したい」という自分の意思で前線から一歩引くことも、賢明な選択のひとつです。重要なのは「その状態にあるかどうか」ではなく「自分の意思で選んでいるかどうか」です。「子どもが小学校に入ったらフルタイムに戻る」など期間を区切って捉えることで、今の状況を停滞ではなく準備期間として前向きに位置づけられます。
よくある質問
Q. マミートラックは法律違反ですか?
A. 妊娠・出産・育休取得を理由とした不利益な取り扱いは法律で禁止されていますが、多くは「配慮のつもり」という形で行われるため、違反にあたるかの判断が難しいケースが多くあります。明らかな不利益がある場合は労働局などの窓口に相談できます。
Q. 上司に相談すると関係が悪くなりませんか?
A. 不満ではなく前向きな提案として伝えることで、多くの場合は好意的に受け止めてもらえます。
Q. 時短勤務中でもキャリアアップはできますか?
A. できます。時短勤務者の昇進・昇給を後押しする企業も増えており、成果と意思表示を続けることが鍵になります。
まとめ
- マミートラックとは、本人の意思に関係なく責任ある仕事や昇進機会から遠ざけられる状態
- 原因は育休中の不在、時短勤務、急な欠勤、職場側の善意の思い込みなど
- 苦しさはポジションを外されること、昇進昇給の停滞、職場での孤立感
- 2025年の法改正で時短勤務の対象が拡大するなど制度面は前進している
- 陥らないための対策や、上司相談・異動・転職という抜け出す選択肢がある
- 自分の意思で選ぶのであれば、あえてマミートラックを走ることも前向きな選択になる
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