前編からのつづきです。
栄養士と管理栄養士の違い
-管理栄養士というのは、栄養士とどう違うのですか?
法律で役割が決まっているんですが、栄養士は、健康バランスのとれた献立作成をします。
管理栄養士は傷病者などを対象にして、病院などで専門的な栄養指導を行います。
管理栄養士は、厚生労働省大臣が認定する国家資格。栄養士は、都道府県の知事が認定する国家資格ですね。
-管理栄養士も試験を受けて取るんですね。
私は入社前に栄養士の資格しか取っていなかったんですね。
それで、入社したての頃の責任者が20代前半の方だったんですけど、その方が管理栄養士試験に挑戦すると言われていて、すごく勉強をしていたんです。
たぶんそこから影響を受けたんでしょうね。私も頑張ってみようかなと思えたんです。
管理栄養士の資格が取れたことは、自信になったなと思います。
-何回かチャレンジをされたんですか?
すっごく難しいんですよ。2回か3回受けました。
最近まで、実務経験なしでも受けられる期限があったんですね。それがラストチャンスだっていう時にポンって受けたんですけど、そんなポンって受けたんじゃダメで。
その翌年また受けたんですけど、ちょっと自分で勉強したぐらいじゃダメなんですよ。
最終的にはちょっとだけ学校に行きました。月2回ほど日曜日に。
-今は実務経験が何年いるんでしょうか?
今は4年制大学・専門学校の管理栄養士養成コースを卒業すれば、実務経験なしで受験資格が得られます。
栄養士の免許だけだと、4年制の大学を出た人は1年以上、2年制の人は3年以上の実務経験が必要ですね。※1
どうしても社会に出たら合格率がガクッと20%くらい落ちるんですよ。
-学習が必要ということですね、時間をとって。
そうですね、あとは新しいことがどんどん増えてくるので、学び続けないといけないなと思います。
まったくなかったキャリア志向
-今は「スーパーバイザー」というポジションでお仕事をされてますが、当初から予想されていましたか?
まったくしてなかったです。
-キャリア志向は?
ないです。結婚前もまったくないです。
母も同じように栄養士の資格を持っているんですけど、ずっと専業主婦をしていたんですね。仕事には出ていなくて。
家のことをいろいろして子どもの帰りを待ってという、その印象があるのか、もともと外に出てバリバリというのはなかったです。
-旦那様は扶養を外れたり、今このようなお仕事をされていることに理解はありますか?
特に何とは言わないんですけど、「決めたら自分でしてしまうだろ」ってよく言われるんですよ(笑)相談とかなしに。
食事の用意などは頑張っていますので、特に言われることはないですね。やっぱり食に携わる人が、家族の健康を害してまで仕事してはと思いますので。
-先ほど退社が19:00頃とお伺いしましたが、帰られてからの家事が大変ではないですか?
食事については、休みの時にある程度下準備はしておいて、帰ってからすぐ取り掛かれるようにはしています。でないと一から作るのはストレスになるので。
家族6人分の食事を買うのも大変ですし、個人的に料理はしたいですね。せっかく管理栄養士の免許を持っていますし。
-キャリアを意識してきたのはいつからですか?
正直意識したことがないです。そのつもりがなかったので、今まで全部一旦お断りしてきたくらいですから。
ただ、正社員になる時より、責任者になる時が一番ハードルが高く感じました。あの時、一番どうしようかと思って悩みましたね。
仕事の話とは違うんですが、幼稚園の時に役員をしていて、会長にというお話がきたんです。
「絶対できない」って思っていたんですが、仲良い幼稚園のお母様方とか先生とお話しをして、もう泣く泣く引き受けたんですね(笑)「1年やったら終わりだから」と言い聞かせて。
でも、その時の経験があったから今があるのかなと思っているんですよね。なんとかできるもんなのかなと。あれがなかったら私、今のように仕事をしていなかったかもしれません。
20代の上司がキーパーソン
-今ここまで続けらたのは、この方の助言があったからとか、キーパーソンや助けられた方というのはいらっしゃいますか?
私、いつもその話になった時に言うんですけど、入ったばかりの時の責任者ですね。
私は40歳で仕事を始めて、その方は22、23歳だったと思うんですけど、栄養士でね。ほんとにその方からいろんな影響を受けていると思います。
いろんな元気をもらったし、もちろんきちっきちっとされているんですけど、想像される責任者というイメージとは少し違うんですよ。
若いんだけども上手い具合に現場をまとめられていたんです。
私たち30~40代もいれば、もっと年が離れて60歳くらいの方もいて。年齢がバラバラのスタッフが全員で9人くらいの現場だったんですが、気遣いがすごくて、前向きだし。すごく影響を受けたんです。
私は夏に入社したので、厨房がとても暑くてしんどくて。家に帰ったら帰ったで、子どもは習い事をしていたのですぐに出て行かないといけないような状況で。
入社したその日の夕方にその方から電話がかかってきて、運転中だったんですけど、すぐに道の脇に車を停めて出たら「おつかれさまでした。どうでした初日?」と聞いてくださって。何気ない会話をしてくださって、それが3日間続いたんです。なんだか、とてもいいなって。
現場もしんどいんですけど、その方がいろいろ空気感を作ってくださって。本当にしんどい日々だったんですけど、でもその方を含め、働いているスタッフみんなが良かったから続けられたんだなと思っています。ありがたかったですね。
もう11年も前ですけど、未だに思い出しますね。私も責任者の方にお話をする時には、その話を時々出したりしています。
新人さんが入られた時にも「現場はしんどいと思いますけど、スタッフ同士で支え合えれば続けられると思います」という話をしますね。
-5年後の自分はどのようになると思いますか?
たまに5年後を想像するんですけど、たぶん体はまだ頑張れると思います(笑)
私のこの歳でもう一度一から始めることは難しいと思うし、この会社にご縁があって今まで続けてこられたというのがあるので、ここでがんばると周囲にも言っています。
今は、おかげさまで両親二人とも元気でいますが、もし介護となったら、それに合わせた働き方をさせてもらおうかなとは思っています。
-会社として、働かれている方々が、介護や育児などのライフイベントと付き合っていきながら、今やっていること・やりたいことをそのまま続けていけるような体制作りや取り組みなどはありますか?
会社が理解をしてくれていると感じることは多々あります。
例えば、前に会社でとても大切な勉強会があったんですが、その日、母を病院に送らなければならなくなったんですね。どうしようかなと悩んでたんですけど、会社から「ぜひ行ってあげてください」と言ってもらえたことがありました。
やはり女性が多い職場なので、そういった家庭の事情などは理解をしていかないといけないと私自身も思っています。
お互いに協力し合って、応援に来たり行ったりして対応をしています。
学校給食は生徒から元気がもらえるお仕事
-今の仕事のやりがいや一番うれしいと感じることはなんでしょうか?
微力ながらいろんな方から相談されてお話を聞いていると、直接言ってくださる方もいらっしゃるんですけれど、「小野さんがいてくれるからいろんな相談ができるわ」とか言ってもらえる時ですね。
私は現場から始まった人間なので、現場のみなさんの働きやすい環境で仕事してもらいたいと感じています。
-学校で調理をされていた時のやりがいは?
学校って本当に毎日違うんですよ。仕事内容が。もちろん毎日同じことをするのが好きな方もいらっしゃいますが、私は同じことが苦手で(笑)
いろんなことができるし、「今日は何のメニューでどういうことをするんだろう?」って毎日楽しみでもありました。
いいものができたり美味しそうな献立があったりすると、家に持ち帰ったりして家で作ってみようかとか。プライベートでも役に立ったかな。
それから、生徒さんの顔が直で見えることは素敵でしたね。
私が行っていた中学校では、調理スタッフも調理場から外に出て、立ち当番というものをしていたんですね。生徒さんが手を洗った後に一人ずつ来られて、私たちが消毒液をシュッとかけてあげるんです。そんなに長話をするわけではないんですけど、一人ひとりの顔が見えることが良かったですね。
食事後にお皿を返しに来てくれる時にも「美味しかった」って言ってくれたりとか。学校っているだけで元気をもらえるんですよね。
私は、自分の子どもが通っていたので、家に帰ってから「今日あれが美味しくなかった」とか「あれ美味しかったから、また作って」とか(笑)コミュニケーションができたりというのも良かったと思います。
-最後にメッセージをお願いします。
いつも思うんですけど、給食を作るって本当に大事なお仕事だなと。
食はすべての始まりでもあって、絶対に欠かせないものです。その人の体を作るものですから。
特に学校給食となると、成長段階の児童・生徒さんの食事を作ることになるので、大きく言えば、未来を作っていくお仕事とも言えるんではないでしょうか。
そんな責任感があってやりがいもある素敵なお仕事に、興味を持ってくれる方が増えたらなと思っています。
(おわり)
※1 詳細は「管理栄養士国家試験」(厚生労働省)参照
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